スウィート・エネミー 甘い媚薬

原題:DULCE ENEMIGA
1996年/ベネズエラ 全153話(1回60分)
出演:ジグリオラ・サンチェッタ・ピレーラ(ビクトリア役)/ギジェルモ・ダビラ(フリオ役)
日本での放映:スーパーチャンネル(CS ch.360)

 こんなものまで買い付けてくるとは、東北新社(スーパーチャンネルの親会社)は一体自分のところの視聴者層をどのように考えているのか?小一時間問い詰めたくなるぐらいすごい作品であります。

 何が素晴らしいか?その1:見てるだけでラテンアメリカのノリがなんとなく分かる
 何が素晴らしいか?その2:見てるだけでスペイン語の曲が歌えるようになる
 何が素晴らしいか?その3:見てるだけでベネズエラの首都がカラカスだということを覚えられる

 まずはどのようなドラマなのかご説明申し上げたいのですが、とにかく153時間に渡る壮大なドラマ故に簡単には語り切れません。
 主役はビクトリアとフリオという愛し合いながらも運命のいたずらで引き裂かれ続ける男女です。そこに彼らをとりまく人間模様があるのですが、それを図にするとこんな↓になります。

 .........え〜っと、分かりますでしょうか?因みにこれは100話ぐらいまででここまでくるのに死者3人、身障者2人、飛行機事故1回、火事1回、交通事故2回、警察のご厄介多数を出しております。最終話までにはビクトリアとフリオの異性関係が各1人ずつ、事故が1回、死者6人、逮捕者数人(うち1人は精神病院行き)というエピソードが挿入される予定です。大体100話目ぐらいまでの登場人物は以下のようになります。

《登場人物の紹介》

ビクトリア・アンドゥエサ(ビッキー)
  このドラマのヒロイン。カラカスの上流家庭の長女で、イタリア留学帰りの飛行機でフリオと出会う。しかし皮肉にもフリオの会社で役員を務めていた父は、この出会いの直後、横領の罪を咎められ心労で急逝。何もかもなくした家族を励ましながら、一人フリオに復讐を誓う...が、結局本当にフリオを愛してしまい家族の反対を押し切り結婚。しかし小姑のロサウラやアシスタントのミネルバ、エンリケ、妹のラウラの妨害で離婚し、ウリセスとスピード再婚。しかし本当に愛しているのはフリオであった。自分の娘がフリオの子であることは黙っている。
フリオ・セサル・ゲレロ
  
レニントル社社長。最初の妻に先立たれ一人娘と小煩いおばの3人で味気ない暮らしをしていたが、ビッキーに一目惚れ。まさか横領した部下の娘とは知らずに交際を始める。結局ビッキーと結ばれたまでは良かったが、ビッキーに横恋慕していた親友のロマノが描いたビッキーのヌード画を誤解し離婚を決意。その後ビッキーへの当てつけで、ビッキーの実妹、ラウラと即結婚。それでもビッキーを忘れられず、何かとちょっかいを出し、とうとうラウラに「ビッキーを愛してる」とビックリ発言までする。その発言に動転したラウラは家を飛び出し車に轢かれて半身不随の身なったため、離れられなくなる。因みにこのドラマの主題歌は彼が歌ってます。
マリア・ラウラ
  
このドラマ内の悪女No.1。ビクトリアの妹で一緒に育てられたが、実はビッキーの父親が愛人のミネルバに産ませた私生児。父親の死後、凋落した実家を嫌い上流階級のロドリゴ・アグウェリベーリと結婚。しかし結婚の夜、ロドリゴは強盗に射殺され、無一文でアグウェリベーリ家を追い出されてゲレロ家に嫁いだビッキーの元へ。やがて色々と策を弄し、ビッキーの後がまにまんまと入る。不妊症で子供が産めない事実をフリオに話そうとしたダニエル先生を毒殺したり、ホントは歩けるのに歩けない振りをしてフリオを繋ぎ止めようとしている。

ココ
  
ビクトリアの幼なじみ。明るく機転の効く性格で、自分の想い人に取られようとも友情を優先し、数々の危機を助けたりしていたが、婚約者のウリセスが自分を捨ててビッキーと一緒になったことで逆上。一転して復讐の鬼に。フリオのいとこビクトルと結婚し、ラウラと一緒にビッキーへ嫌がらせをする。
ウリセス・ロマノ
  
フリオの大親友で著名な画家。少々エキセントリックな性格で、友人の妻であるビッキーに一目惚れ。恋い焦がれるあまり、ビッキーのヌードを想像で描いちゃったりするのだが、諦めてココと婚約。しかしその直後ビッキーが離婚。婚約してたことを知らなかったビッキーが、お腹の子の父親になってくれと頼むとココを即捨て。フリオに操を立てて何もさせてくれないビッキーに時々キレつつも、献身的に尽くす男。
ミネルバ・カルドーゾ
  
マリア・ラウラの実母。アントニオ死後はアルフォンソの愛人でもある。抜け目なく権力に擦り寄る性格で、一時はフリオにも秋波を送ってた。しかしラウラが狙ってると知って二人がくっつくようにあれこれ協力。ラウラをアントニオに取り上げられてしまったことを悔やんでいて、母親として認められたいという気持は強い。ラウラの事故の時にアルマに「子供を手放すなんて母親失格だ」となじられるわ、ラウラに「母親はアルマだけ」と言われて逆上。エドガーにアンドゥエサ家を放火させる。
アルマ
  
ビクトリアたちのやさしい母親。典型的ないいとこの奥様でアントニオ一筋であったが、死後出てくる様々なことにショックを受ける。最初はどうやって生計を立てていくかも分からずおろおろしていたが、段々生活力がついている模様。ダニエル先生から求婚され受けるが、結婚式最中にダニエルが急死し再び失意のうちに。
ルシア
  
ビクトリアの一番下の妹。清純派にも関わらず恋人ナチョに弄ばれた挙げ句、妊娠。結局流産したが、その時支えてくれたバレエ学校の同級生マノロと結婚。順調な結婚生活で再び妊娠したが、マノロの浮気を聞きショックを受けている。
ロサウラ(ロサリオが本名)
 
 フリオのおばで育ての親。本当はフリオの実の父親アルハンドロを愛していたが彼は妹のナタリアと結婚。失意のあまりアルハンドロを殺し、その罪を身重の妹に被せた挙げ句、産まれたフリオを預かるとみせてそのまま行方を眩ましていた。フリオには「お前の母親は子供を捨てたひどい女」と教えている。
ナタリア先生
  
ビクトリア姉妹やクラウディアの小さい頃の学校の担任。無実の罪を着せられて服役し、出所後は学校の先生をしている。息子とロサリオの行方を探していたが、クラウディアの家庭教師を頼まれたことでロサウラ=ロサリオ、フリオが実の息子ということが分かったものの、フリオの母親への憎しみも知ってるが故、名乗れない状態。
クラウディア
 
 フリオの最初の妻との間の子供。最初はビッキーを歓迎してたが、一度結婚式をドタキャンしたことで不信感を持つようになる。その後ラウラに色々と吹き込まれた上、整備不良の車に乗ったビッキーに轢かれていよいよ嫌いに。高校生になり数学教師のリカルドに恋心を抱くが、反対されてちょっとアル中。
ダニエル先生
  
腕の立つ医者。ビッキーとココがパーティ会社を起こしたとき、病院のチャリティパーティを依頼。その後、家から勘当されたビッキーに一方的な結婚申し込みをしたり、ココと付き合ってたりしたが、結局ケーキ作りの上手いアルマに惚れて求婚。ラウラが不妊症なのに妊娠を偽った話や、歩けるようになるのにリハビリをしようとしない話など全部ばらすと言ってしまったが故に殺される。

パンチョ神父
  
アントニオの兄。アンドゥエサ家の良き相談相手。
ピタ
  
アンドゥエサ家の家政婦。料理上手。
ビクトル・マヌエル
  
フリオのいとこで医者。ココと結婚するが、自分は利用されてるだけであることを知って絶望してる。
アルフォンソ・モンテベルデ
  
フリオの会社の役員。アントニオの死後、横領の損失を補うためにアンドゥエサ家の財産を没収。フリオの後がまを狙っていて、フロリダ出張にかこつけて飛行機事故で亡き者にしようとするが、ミネルバの機転で阻止される。
トニート
  
ビクトリアの弟。一時期ぐれてエドガーの仲間になり、ダニエルの診療所から金を盗んだり、宝石店に強盗に入ったりとやっていたが、今は立ち直り士官学校に入学。
マノロ
  
ルシアの夫。エドガーに絡まれたり、ナチョに泣かされるルシアをひたすら支え続けていた。ダンサー志望だが今は生活のためにモデルをしている。
ホセ・イグナシオ(ナチョ)
  
ルシアの最初の彼。我が儘で女癖が悪く、ルシアをさんざ悩ませた挙げ句、スペインに行ってしまう。しかしルシアの体が忘れられなく、カラカスに戻ってからはアンドレナと共同してルシアたちを別れさせようとする。
アンドレナ 
  
ナチョのいとこでマノロの所属するモデル事務所の社長。仕事にかっこつけてマノロと共にスペインへ旅行、一夜を共にするのに成功する。ルシアと同時期にマノロの子供を妊娠。
エンリケ・オカンポ
  
ビクトリアの婚約者だったが、貧乏になったアンドゥエサ家をさっさと捨ててルイシータと結婚。義父アルフォンソと共にレニントル社で働く。ビッキーがフリオと結婚した後も色々ちょっかいを出していたが、フロリダ出張の飛行機に乗り死亡。
ルイシータ
  
アルフォンソの一人娘。非常にイモっぽい女で、エンリケを取られるのではとビッキーに対し敵愾心を丸出しにする。エンリケの死後はショックのあまり頭が変になるが、運転手のサムエルと再婚。
サムエル(マスカレード・マン)
  
運転手をしながら夜はアレッシオのバーで仮面姿(マスカレード・マン)でストリップをしてる。上昇志向の強い男で、ルイシータと結婚したのはのし上がるためである。マスカレード・マンの姿でミネルバと一夜を共にするが、まだ正体は知られてない。
ロラ・アグウェリベーリ(デリシャス・ロラ)
  
ロドリゴの母。上流階級然としてるが本当はデリシャス・ロラという名でいかがわしい唄を出していた踊り子。ロドちゃんとラウラの結婚を反対していたが、ラウラに過去の秘密を握られ渋々承諾したものの、結婚式の夜に息子を亡くし、これも全てラウラのせいだと憎んでいる。ラウラを援助、結婚したフリオも憎んでいて、レニントル社の株主としてアルフォンソと共にフリオの追い落としを画策。
ピナ
  
アルフォンソの妻。ミネルバやロラと仲がいい。 
リカルド
  
町の不良だったが、パンチョ神父に拾われ教会の雑役をしながら大学を卒業。クラウディアの高校で数学教師になる。クラウディアの求愛に戸惑っている。
エドガー
  
同じく町の不良。ルシアにちょっかい出したり、飛行機に爆薬をしかけたりとさんざ酷いことをしていたがパンチョ神父の力で突然改心。パンチョ神父の元で働いている...と見せかけて実は全然改心してない。
ホセ・マリア  
マノロの父で食品店を経営。ロラの昔の仲間でもあり、結婚の約束をしてる。
フェリペ  
フリオの運転手。実はラッパー。
アマリリス  
フリオの秘書。フェリペの妻。
リドルゴ警部  
フリオとウリセスの親友。アマリリスに恋してる。
マリー・V  
ビッキーとフリオの娘。口がきけない。
ビルヒニア  
マリー・Vの言語療法士。
マルタ  
ビルヒニアの叔母でアパートを経営してる。 
アントニオ  
ビッキーたちの父親。2話目で死んだのにオープニングタイトルには出続けてる。
アルハンドロ  
フリオの父。
アンパロ  
ゲレロ家の使用人だったが、ビクトルのことでクビになりビッキーの元へ。ビクトルが好きだが彼はその事を知らない。
サビナ  
ミネルバの妹。田舎から出てきてミネルバのアパートでしばらく暮らす。飛行機事故の真相を知ってる。
パピート  
サビナの夫。飛行機事故の話でミネルバやアルフォンソたちを強請る。
リリアナ  
アレッシオのバーのホステスだったが、フリオに援助を受けアパートと仕事をあてがって貰う。
アンヘラ  
ビクトルの助手、ビクトルのデート相手。
ロドリゴ  
ロラの一人息子でマリアラウラの最初の夫。
ディエゴ  
クラウディアの同級生。クラウディアに恋心を抱いてる。最初に酒を呑ませたのはこいつ。
アレッシオ  
バーの名物親父

 100話目から最終回まではどーなるかと言いますと(正確でないところあるかもしれませんが)、まずマリー・Vがフリオの子供であることがばれて親権争いになるのが1つ。クラウディアとリカルドは良い感じになるのですが、結局リカルドは何故かリリアナと結婚。クラウディアもトニートと結婚します。ルシアのところは別居→離婚となりますが、これまた離婚届を出した役所が火事になって離婚は無効。ビッキーの勧めでよりを戻します。因みに妊娠までしてたアンドレナは都合よく死にます。死ぬと言えばココもあっけなくNYで死んで最後にアンパロの恋は実ります。
 フリオはゲレロ家に恨みを持つ女(名前を失念)と同乗した車が事故を起こし、失明します。で、ラウラの悪魔度はいよいよ増すのですが、ビッキーから遠ざけようとフリオをイタリアに転地させるために向かった空港でロラに撃たれて死にます。そうそう、そういえばクラウディアはパピート達に誘拐されるのですが、サビナの助けもあって助かります。しかしその時パピートは射殺されます。
 ロサウラはマルタの家からアルハンドロ殺しの証拠が出てきたりして大慌て。口封じのためナタリアのム所仲間を殺したりしますが、結局バレて頭がおかしくなり精神病院行きです。
 最後にビッキーですが、ウリセスがNYへ行く途中、飛行機事故で死にます。行く先を失ってマルタのアパートに引越し、そこでまた素晴らしい人格者の先生に求愛されます。結婚式直前まで行きますが、やはりフリオが忘れられずドタキャン。失明したフリオを支える決意をします。で、再びフリオと...というところで突然ウリセスが生還。しかしウリセスはビッキーを自由の身にしてあげるのでした。因みにウリセスは最終回で真っ赤なタキシードを着て画廊のパーティに登場。新しい恋のお相手を無事見つけてます。
 色々なサイドストーリーを巻き込みながら、最終話で当然、いとしい敵(だからスウィート・エネミー)同士のビッキーとフリオはついに結ばれるのです。素晴らしい!

 とにかく登場人物がこゆいのは勿論のこと、あらすじのご都合主義さ加減は目を見張るものがあります。またラテン系女性陣一部のボン、キュッ、ボーンもといボン、ボン、ボーン(でもボディコン)やシミだらけの肩は一度見ると忘れられません。
  あと向こうじゃ清純派はヒラメ顔でないといけないのか、と思うぐらいルシアとクラウディアの目の離れ方、たれ目具合はきてます。いや、でも何が一番すごいってビッキー役のジグリオラ・サンチェッタ・ピレーラでしょう。何であの体型でモスキート好きなのか?もう十分暑苦しい顔なのに唇オーバーリップに描くのは、もはやラテンの宿命なのでしょう。
 もうひとつ言っておかねばならんのは、ウリセス役の俳優の演技の濃さ。エキセントリックな役柄といったって、頭からペンキかぶって泣いたり、女をプールに引っ張り込んでキスというのは...演出なのかなぁ。なんか本人がノリノリでこうやろうって決めたような気がするなぁ。とにかく特別出演っぽいし。

 ラテン版渡鬼(でもこっちは向こうでも毎日連続放送)とも言えるこの作品。百聞は一見にしかず。まずは見ろ。